今治地方に伝わる 継ぎ獅子
今治地方に伝わる、「継ぎ獅子」は、人の上に人が立って獅子頭をかぶり獅子を舞うという、全国的にも例を見ない特徴のある獅子舞です。
今から、約300年の昔伊勢神宮から「代々神楽」の一団が、伊勢神宮のお礼を持って今治地方の、塩田などを訪れ、穢れを払い、豊穣を願う「お祓い」のために来ていました。
伊勢の代々神楽は、大人の肩の上に獅子頭をかぶったもう一人の大人があがり、扇や剣を持って舞う「二継ぎの獅子舞」です。この「代々神楽」にヒントを得て、“わたしたちの氏神様にもこの獅子舞を奉納し、お喜びいただきたい”ということから、継ぎ獅子が始められたと言われています。
わたしたちの遠いご先祖様は、“神様は天においでて、わたしたちの生活を見ておいでる。そしてお守りいただいている”と考えていました。この事から、伊勢の代々神楽をさらに発展させ「少しでも神様に近づきたい!」という気持ちから、だんだんと上へ上へと、高く高く継いでいく「三継ぎ獅子」「四継ぎ獅子」「五継ぎ獅子」へと発展させていったのでした。以前には「六継ぎ獅子」も見られました。
「三継ぎ獅子」は、大人の肩の上にもう一人の大人が立ち、さらにその頂点に獅子頭をかぶった「獅子児」と呼ばれる子供があがります。そして、この「獅子児」が、扇や鈴を持って勇壮に舞を舞うのです。この「獅子児」は、村を継いで行く村の宝であります。継ぎ獅子は、“この村の宝を村人が一致協力して下からささえていく。守っていく。”という姿をあらわしています。
氏子に団結を乱す者、つまり、非協力者がいれば、この「三継ぎ獅子」は崩れてしまうことは火を見るよりも明らかであるわけです。
ここには、“村に困難が降りかかった時には、村人が一致団結をして村を守るんだ”という尊い教えもあるのです。氏子の神様にたいする強い気持ちと団結心を、年に一度のお祭りに、神様の前で身をもって明らかにした「神楽舞」であるわけです。
現在、愛媛県の無形民俗文化財に指定をされています。